マンスリーサポーターの獲得に注力すべきNPO、すべきでないNPO

2019年9月11日

オンラインで寄付を集めるというと、注目されやすいのがマンスリーサポーター。
財源の継続性や安定性などの面では魅力的ですが、新規ドナーの獲得に苦労しているNPOも多いのではないでしょうか。
投資対効果の観点から、どのような戦略でWEBマーケティングに臨むべきか?を解説します。

マンスリーサポーターを、本当に集めるべきなのか?

「WEBマーケティングで、継続的な個人寄付会員を募りたい」
「マンスリーサポーターを増やすためには、どうすればよいですか?」
NPO/NGOの経営者の方から、このようなご相談をいただくことが多いですが、そのときに次のようにお伺いし直すことがあります。

「マンスリーサポーターの獲得に注力するのが、今のフェーズで本当に良いことなのでしょうか?」
なぜなら「マンスリーサポーター」や「寄付会員」など毎月の継続的な寄付(※)については、短期的な投資対効果でみたときには、非常に効率の悪いモデルだからです。
(※以後、呼び方は「マンスリーサポーター」に統一)

たしかに、マンスリーサポーターは、継続性や安定性の面では魅力的な財源です。
たとえば、5,000人のマンスリーサポーターがいるNPOを考えてみましょう。
1ヶ月あたりの平均支援金額が仮に2,000円だった場合、月の収入は1,000万円、単純計算すると1年間に1億2,000万円の収入です。

しかも、マンスリーサポーターの良いところは継続率が高いこと。
入会から1年以内の離脱率は、一般的には10%以内に落ち着くことが多いようです。
(自動引き落としなど決済が整備されていて、メールなどで寄付者への報告を定期的に行っている場合)

つまり、ひとたび一定人数のマンスリーサポーターを獲得すれば、安定したストック型の財源となるのです。

獲得コストや難易度を、助成金と比べてみると・・

ところが、マンスリーサポーターの難点は新しくドナーを獲得するのが、難しいことです。
たとえば助成金なら、趣旨が活動に合致した募集要項をいくつか選び、申請書を書いて提出すれば、採択されることは少なくありません。

すなわち、金銭的なコストは0(=人件費のみ)で数十万円から、なかには数百、数千万円単位の資金を得られることもあります。
法人からの寄付についても、同様でしょう。
活動が成果を挙げている団体なら、業界内の評判や理事のネットワーク、地道な営業活動などによって、企業や財団と案件が進むことも珍しくありません。

ところが、マンスリーサポーターについてはそうはいきません。
不特定多数の個人の方々に活動を知ってもらうためには、コストがかかるからです。

テレビや電車、インターネットなど で、NGO/NPOが広告を出しているのを見たことがある方もいるでしょう。
月1,000円からの寄付を募るのに、マンスリーサポーター1人あたりの獲得コスト(広告費÷獲得人数)がどれくらいかかるかご存知ですか?

最低でも5,000円から10,000円以上、なかには20,000円〜30,000円はかかっている例もあると聞きます。
つまり、その時点では収入が1,000円しか入らないのに、支出だけはその10倍以上発生してしまう場合もあるのです。

「お金を(しかも善意のお金を)集めるのに、お金がかかる」というと、驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、現実には民間企業がマーケティングを競っているのと同じように、NPOも人々の「共感」や「注目」をめぐる競争にさらされているのです。

支援性の財源ごとのメリット/デメリット

助成金 法人寄付 個人(単発) 個人(継続)
継続性・安定性
使途の自由度
獲得コスト

「身内頼り」でなく、不特定多数の型に支援してもらうために

マンスリーサポーターの獲得には、単発の寄付と比べてもコストがかかることが多いようです。
どのような理由があるのでしょうか?

単発の寄付については、一過性の支出なのでお金が出しやすいでしょう。
また、クラウドファンディングのように資金の使途を明確に打ち出す場合は、支援者にとってもイメージが湧きやすい、というメリットもあります。

一方、毎月に定期的にお金が出ていくとなると、身構える方が多いもの。
さらにマンスリーサポーターでは資金の使途もはっきりとは明示しづらく、不利は否めません。
マンスリーサポーターも、少人数でもよければボランティアや既存寄付者など「身内」や、職員・家族の友人など関係者に草の根で広がることもあるでしょう。

ところが、人数をこれまで以上にペースを上げて増やそうとなると、これまで団体の活動を知らなかった方にも、行動してもらわなければなりません。

NPOならではの広報ということで、無料でできるソーシャルメディアやマスコミ露出に力を入れる団体も少なくありません。
これらは長期的には有効ですが、結果が出るまでに時間がかかる傾向もあります。
ソーシャルメディアのファンやメルマガの登録者を増やす、自然検索でアクセスが集まるようなオウンドメディアを構築する、マスコミに取り上げてもらえるように広報活動を行う、など地道な努力が必要だからです。

そのため、私の知る限りではチャレンジするNPOは多いものの、「人手がかけられない」「インタ—ンに任せてもうまくいかない」などの理由で、成果を挙げるまでに至る例は多くないようです。
不特定多数の方に知ってもらい、寄付という行動までつなげてもらうのは、難易度の高い方法なのです。

LTVとCPAで、投資回収モデルを組む

それなのに、なぜ多くの団体がマンスリーサポーターの獲得に、コストと時間をかけて取り組むのか?
それは、マンスリーサポーターが長期的な収益性という面では、非常に優れているからです。

ある団体で、「マンスリーサポーターの平均継続期間が7年間」というデータが出ているとしましょう。
月間寄付額の平均が2,000円の場合、1人のサポーターの方が支援を始めてから終わるまで、寄付してくださる平均金額は、2,000円×12ヶ月×7年間=168,000円。
もしこの数字が、統計的に高い精度ででているならば、「1人の方が支援を始めてくださると、その時点で約17万円の収入が確定する」と考えてよいのです。

もし17万円の収入が見えていれば、獲得のためにはコストをかけてもよい算段がつきますね。
先ほどのNGOの例のように、広告によって1人あたりに獲得する費用が仮に2万円がかかったとしても、支援に回すための資金を十分に確保することができます。
(運用にかかるコストや割引現在価値を考慮する必要がありますが、説明を分かりやすくするため割愛しています)

このモデルに出てきた数字を、マーケティングの世界の用語に当てはまると、寄付収入の17万円をLTV(=顧客生涯価値)、獲得費用の2万円をCPA(=顧客1人あたりの獲得単価)と呼びます。
このLTVとCPAを数字で見ながら、LTVの最大化・CPAの最小化の改善努力をしていくのdesu.
そして、ひとたび効率的なモデルができれば、投資を増やせば増やすほどマンスリーサポーターの獲得人数が拡大して、寄付収入も増えていきます。

今回は分かりやすく「マンスリーサポーター」について説明しましたが、単発寄付を含めた個人寄付全般にも、このLTVとCPAの考え方は当てはまります。

最後に:スケールさせるための投資に経営的なコミットメントが必要

 

マンスリーサポーターにともない獲得にかかるコストについて説明してきましたが、インフラ面の整備にも労力がかかります。

  • データベース:支援者の情報を記録するためのデータベース
  • 決済:クレジットカードや口座振替などの自動引き落としに対応
  • カスタマーサポート:支援金額の変更や休退会の手続き、お礼の連絡などに対応
  • システム:特に税制優遇を受けられる場合は、領収書発行の作業効率化が課題
  • 経理:決算の発表や使途の報告で正確な数字を出す

大まかな感覚ですが、Excelなどでの管理で、職員が片手間で対応していくのは、せいぜい200〜300人程度までが限界。
データベースや決済システムなどを導入して、効率的な仕組みを整えた方がよいでしょう。
ただし、そのためにはどこかのタイミングで初期投資も必要になります。

たとえプロボノの方などにお手伝いしてもらえたとしても、最低限のシステムの導入・運用費用や職員の人手がかかるでしょう。
そう考えると、最低でも500人、できれば1,000人くらいの規模があって、はじめて有効に機能するモデルと言えるのでは?という感覚を抱いています。

ただし、一度効率的な仕組みをつくれば、サポーター数が3,000人、10,000人と増えても回っていくでしょう。
スケールすればするほど、収入は増えていきます。

さらに、そこから得た収入は使途などの制約がなく自由に、本当に必要な活動に使える場合が多いです。
寄付者とのコミュニケーションをきちんと続けている限り、継続的・安定的に続いていきます。

これまで見てきたように、マンスリーサポーターは先行投資が必要な財源です。
現時点でのキャッシュフローには余裕があり、将来の安定した財源をつくりたいというNPO(目安でいうと、年間収入5000万円以上)には、チャレンジのしがいがあるでしょう。

逆に、この条件に当てはまらない場合は、まずは助成金や法人寄付の獲得に注力して、活動の基盤を整えるのを優先した方がよいかもしれません。
またWEBマーケティングで個人寄付者を集める場合も、マンスリーサポーターよりは単発寄付の獲得に注力した方が、キャッシュフローの観点からは安全でしょう。

それぞれの団体の置かれている組織規模や財務状況などによって、どの財源に注力するのか?を考えるのが大切です。