デジタル・ファンドレイジングで求められる人材は?採用や育成で押さえたい、2つの人材タイプ

2019年9月11日

「WEB広告によるマンスリーサポーターの獲得」や「既存寄付者のリピート促進」などをご支援するなかで、ご相談をいただく機会が増えているのが、採用や育成など“人材”についてです。
デジタルマーケティングを活用して寄付を募る時に、どんな人材が求められるか?を2つのタイプに分けてお伝えします。

「採用」や「育成」のご相談に、必ずお答えする原則

人材について、NGO/NPOの経営者やマネージャーの方からいただくことが多いのは、具体的に以下のようなご質問です。

・団体内でWEBマーケティングを推進するためには、どんな人材がどの程度必要か?
・配置転換や異動をするなら、どんな適性や経験をしてきたスタッフが望ましいか?
新規で職員を採用するにあたって、どのような要件を基準に選考していけばいいか?

私が必ずお答えしているのは、求める人材タイプの違いについて。ひと口に「WEBマーケティング」や「デジタル・ファンドレイジング」と言っても、必要とされる機能はさまざまです。

たとえば、ランディングページ(LP)を制作・改善していくという業務においても、以下のような仕事があります。

(例1)ご支援者に共感してもらえるような、心に響くキャッチコピーをつくる
(例2)WEB解析ツールで、必要なデータを抽出できるように設定する

実は例1と例2では、まったく異なるタイプの能力やスキルが求められます。

例1の仕事は、一般的なNPOで「広報担当」がしている仕事に近いでしょう。
ご支援者の気持ちを想像しながら、団体の活動や社会課題を“響く言葉”に変換していくことが求められます。

一方、例2に挙げた仕事で必要とされるのは、HTMLコーディングやアクセス解析ツールなどの知識。
「IT担当」や「システム担当」と呼ばれる方が得意な領域です。

これはファンドレイジングに限らず、ビジネスにおいても同じ。
マーケティングで成果を挙げるためには、「心を動かすクリエイティブの開発」と「データによる検証改善」の両輪がバランスよく噛み合う必要があるのです。

なぜ「WEB担当」にすべてを任せても、うまくいかないのか?

厄介なのが、マーケティングの全行程で必要な能力やスキルを、1人のスタッフが両方とも備えているケースはほとんどないということ。

あなたの身の回りでも、「センスのあるデザインを作るけど、数字を扱うのは苦手」といった方や、逆に「データは安心して任せられるけど、文章を書かせるとからっきし・・」という方はいらっしゃいませんか?

そこで大事なのが、組織のなかで役割を分担して業務を進めること。
「企画系」と「データ系」と便宜的に呼んでいるのですが、大まかに分類して2タイプが、マーケティングにおいては必要とされます。

具体的に2つのタイプの担当する業務と、適性やスキルの違いを見ていきましょう。

※スキル・知識は入職後に身につけるのを想定

タイプ1:企画系

はじめに「企画系」ですが、WEB広告でマンスリーサポーターを獲得していくために、たとえば以下のような業務をしながら、PDCAを回していきます。

・共感を呼ぶ受益者のストーリーを発掘して、動画や記事を制作する
広告の反応を上げるため、見出しを3パターン作る
・LPでキャッチコピーやメインビジュアル(写真)をテストする

これらの業務のうち、コピーや写真、LPや動画・記事などクリエイティブの企画制作や、施策全体のディレクションを担当するのが「企画系」のスタッフ。
「いかに伝えれば、共感してもらえるか?」「寄付へと至るアクションを起こしてもらえるか?」を理解して、形にしていくのが求められます。

クリエイティブと言っても、コピーライターやデザイナーなど専門職の技術を持っている必要は全くありません。

自身が文章を書いたり、デザインの構成案を考えるときもありますが、主な役割は企画やディレクション。
広告代理店・制作会社、デザイナーやコピーライターなど専門家の力も借ります。

外部のパートナーとの折衝や社内の調整をくり返し、「マンスリーサポーター500件獲得」や「CPA15,000円以下」といった目標の達成を目指します。

適性として求められるのは、人の気持ちが分かる、表現すること・共感してもらうことが好きなど。
(性別による違いはありませんが)これまで見てきたなかでは、女性に得意な方が多いようです。

「広報」や「宣伝」など伝える・発信する仕事や、「営業」や「販売」などお客様を相手にしてきた方は、スイッチしやすそうです。
寄付者の支援動機や共感ポイントを把握していると響く言葉が作れるので、内部からの異動を考える時には、ファンドレイジングでも「営業」「渉外」や「支援者サービス」に近い方も適性があるかもしれません。

広告やWEBの基礎知識やトレンドなどは、入職してからキャッチアップしていくことが求められるので、新しいことを学ぶのが好きな方、マーケティングに興味がある方が良いでしょう。

タイプ2:データ系

続いて「データ系」ですが、「企画系」を前面で成果を挙げる”花形”とすると、地道なインフラを整える”縁の下の力持ち”のような役割です。

・LPやフォームにおける、A/Bテストの実装・検証
・寄付者データベースの分析
・GoogleAnalyticsや広告タグなど測定環境の整備
・目標・KPIの設定と実績管理

成果を数字で測ったり、施策の可否を検証して軌道修正していくために必要な環境を、テクノロジーを活用して整えていくのがミッションです。

適性として求められるのは、いわゆる「地頭が良い」タイプ。
「ロジカルシンキングができる」「数字に強い」「PDCAを回していく習慣がある」といった方だと、力を発揮しやすいでしょう。

同じく性別による違いはありませんが、これまで見てきたなかでは、男性に得意な方が多いようです。
(私が尊敬するマーケターの方は、「ゲームの攻略法を考えていくのが得意な“ゲーマー”タイプが合っている」とたとえていました。)

WEB解析ツール(GoogleAnalyticsなど)や広告効果測定システム(AD EBiSなど)、支援者データベース(Salesforce)、場合によってはマーケティグオートメーション(Marketoなど)やBIツール(Tableauなど)といった、多様なツールを活用します。
したがって、IT・システムのまわりの基礎的な知識は必要ですが、必ずしも「エンジニア」や「プログラマー」など専門職である必要はないと考えています。

なぜなら、PDCAを回していくに際してネックとなるのは、テスト設計やデータ検証など上流工程であることが多いからです。
下流工程であるツールの活用法などは、団体内のシステム担当者や専門のベンダー・システム開発会社にサポートしてもらったり、あるいは詳しいプロボノの方などに聞くこともできるでしょう。

また、エンジニアやIT業界経験者を採用するのは、昨今の採用市場のなかでハードルが高い、という事情もあります。
データや数字を扱う経験をしてきた方、地頭が良い若手の方などを育成していくのが現実的な方法かもしれません。

組織のフェーズに合わせ、柔軟に人材配置を

これまで求められる人材の要件や適性など原理原則をお伝えしてきましたが、現実の組織で機能するために、どう落とし込んでいけば良いでしょうか?

立ち上げ期

規模が大きくないNGO/NPOでは、「既存の職員は現状の業務で手いっぱい」「新規採用する資金的な余裕もない」というケースもあるでしょう。
「1人でも専任担当者を配置するのが大変なのに、2人もなんて・・」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

私自身も、前職でNPO法人にジョインしたときは、ファンドレイジングは「1人部署」からのスタート
投資対効果の見えないスタートアップの時期だったので、

・マネージャーが実務を兼任する
・外部パートナー(広告代理店・システム会社・コンサルタント)のサポートを受ける
・プロボノやインターン生にお願いする

などなんとかやりくりしながら、一歩ずつ仕組みを作ってきました

拡大期

一方、資金調達金額がスケールすれば、たとえば1〜2億円程度になれば、職員2人程度を配置しても、十分にペイするでしょう。
「マンスリーサポーター年間2,000〜3,000人を獲得」といった規模感になれば、2人を配置するのが必要になってくることもあります。

それまでの移行期ですが、経営者やマネージャーの方がコミットする、または外部パートナーの力を借りるといった方法もあります。

たとえば「企画系」に強い職員を1名アサインしたなら、「データ系」はマネージャーが直接に管轄して、作業単位で管理部門のシステム担当者やシステム会社に依頼する、といった形です。

私がお手伝いしているクライアントで、「データ系」に秀でた担当者がいる場合に、「企画系」を私の方でもしばらくは厚めにサポートするといった方法をとっていたこともあります。

拡大期(年間1-3億円規模)に求められる人材・機能の例

まとめ

いずれにせよ、マーケティングの力を使って、支援者を拡大していこうとするに際して、「企画系」と「データ系」の2つの機能が求められるのは変わりません。

そして、外部に「丸投げ」しようとしてもうまくいきません

いくつか理由はありますが、1つは「寄付」という商品の特殊性。
広告代理店など外部パートナーに任せても、ビジネスでの成功パターンがそのまま横展開できないからです。

プロボノや中間支援団体など外部のサポートを受けるにしても、団体スタッフの積極的なコミットがないと、成果が挙がりづらいのは経験している方が多いのではないでしょうか?

本格的な成長を目指すに際しては、外部から専門的なサポートは受けるにしても、団体内に知見が蓄積するように、主体的にPDCAを回していくのが求められます。

外部と内部、マネージャーや一般職員、インターン、有償や無償・・・
さまざまな選択肢を頭に入れて、なんとかやりくりしつつ、「必要な機能を揃えられないか?」ぜひ考えてみてください。

立ち上げ期と拡大期などのフェーズに合わせて、必要なリソースを用意していけるよう、この記事がヒントになれば嬉しく思っております。