米国“AFP2017”で見えた、ファンドレイジングの未来(前編) ー「モバイル決済」「Peer to Peer」など、オンラインの5つのトレンドー

2019年9月11日

「テクノロジーの進歩によって、寄付という行動が、未来にはどう変わっていくのか?」

2017年4月に米国で開催された、ファンドレイジングの一大カンファレンス「AFP 2017」。
私が参加した動機の1つは、冒頭の問いへのヒントを探りたかったことでした。

「アメリカで生まれたトレンドは、1〜3年後に日本でも盛んになる」と言われます。
セッションを受け展示ブースを回り、関係者と話をするなかで、WEBマーケティング×寄付に関連して見えてきた、“5つのトレンド”を解説します。

「モバイルシフト」は、米国でも“後戻りできない”流れ

オンラインからの寄付比率が高まっている傾向は、いくつかのセッションでも共通して語られていましたが、そのなかでも強調されていたのが「モバイルシフト」。

たとえばDonorPerfectという寄付データベース上では、「オンライン寄付の21%は、モバイル端末から」とのこと。
モバイル端末からも寄付をしやすいように、「サイト全体のレスポンシブ化」や「申込フォームの最適化」「Eメールのスマホ対応」などの重要性が説かれていました。

 

この「モバイルシフト」の流れは、日本のオンライン・ファンドレイジングでも共通していますね。

日本でも、私がコンサルティングをしているいくつかの団体で、この1年間で最も力点を置いていたのが“スマホファースト”。
オンライン寄付のモバイル比率が短期間にPCを上回り逆転、50%以上へと高まったケースもありました。
(むしろ冒頭の数値からも、モバイルシフト自体は「日本の方が進んでいるのでは?」という印象を抱きました。)

スマホからの寄付で難しいのは、申込フォームなどで決済を完了してもらうまで。
フォームでの完了率がPCと比べて、30〜40%程度も低くなってしまうこともあります。

たとえばクレジットカード情報を、「スマホから入力する作業の煩わしさ」や、「ネットで初めて知ったNPOに預ける心理的ハードル」を肌で感じてきました。

そんな課題解決へのヒントとして複数のセッションで言及されていたのが“決済”の重要性、なかでも第3者プラットフォームを活用した「モバイル決済」の活用でした。

トレンド1:モバイル決済(ApplePayなど)の普及

たとえば「ActBlue」という決済・DBシステムでは、ApplePayを通じて寄付をできる仕組みを小規模NPOにもデフォルトで用意

また中国の事例として、13億人が利用するメッセージ/通話アプリ「We Chat」の決済システムを利用して簡単に寄付できる、Tencent Charityも紹介されていました。

会場からは「AmazonPay」(=Amazonの決済を利用して支払いできるシステム)など具体的なツールを例に出した質問も挙がっており、モバイル決済への関心の高さも伺えました。

 

ビジネスの世界では、AppleやAmazon、Facebookといった巨大プラットフォーム企業が、ユーザーが登録した決済情報を活用して、別のECサイトで買い物をしたり、ネットサービスの支払いをしたりできるインフラを提供しています。
日本では、LINEや楽天といったサービスがその動きに準じています。

日本でもモバイル決済が普及していけば、ユーザーが慣れ親しんだ&信頼しているプラットフォームを活用して、“1タップで”寄付できる環境が整っていくはずです。

ECサイトでは日本でも、「AmazonPayの導入によって、CVRが20%アップ」といった事例も出てきているそう。

もちろんモバイル決済が、「寄付という文脈において、日本のユーザーに受け入れられるか?」という不確定要素もあります。

ですが「スマホから、1タップで寄付」が日本でも2−3年後に普及していけば、“ゲームのルールを変える”といっても過言でないほど、オンライン寄付の環境が大きく変化するかもしれません。

トレンド2:ソーシャル×動画(Facebook Live & Donate)

続いて興味深かったのが、Facebook Liveの活用事例です。
日本でも、イベント中継やインタビューなどでFacebookのLive動画が活用されるシーンが増えていますね。

米国の大手NGO、ACLU(アメリカ自由人権協会)は、移民の入国を規制したトランプ大統領令に対して申し立てを行い、1週間で約27億円の寄付を集めたそうですが、その時にFacebookも活用。
支持者がACLUへの応援を訴えかける、Live動画を投稿しました。

Live動画上には、一般のユーザーが共感して投稿したコメントや応援のシェアが、まるでニコニコ動画のように表示されます。
たくさんの人々のメッセージが表示されれば、“盛り上がっている感”や“みんなも応援している感”が出て、「私も参加したい!」と感じやすくなるでしょうね。

動画を見て賛同したユーザーは、「Donate」のボタンをタップすると、Facebookに登録した決済情報を活用してすぐに寄付できるという仕組み。
活動や団体を初めて知った方も、寄付をするハードルは下がるでしょう。

日本では、Facebookのアルゴリズム変更にともなって「団体ページから画像やリンクを投稿しても、2-3年前から比べるといいね!やシェアが減ってきた」という声を、NPO関係者からもよく伺います。

Facebookは「動画に注力していく」方針を表明していますし、Live動画をプロモートしているのは1ユーザーとしても実感します。

マンスリーサポーター獲得のためにFacebook広告を配信していても、画像よりも動画の方がコンバージョンを獲りやすい傾向は歴然と見えています。

LINEやTwitterなど他のメディアでも、動画には今後力を入れていく方針が伺えます。

ソーシャルメディアを活用するなら、たとえばFacebookのLive機能のように動画にトライしていくのが、これから2-3年の成功の鍵を握るでしょう。

トレンド1と合わせて、関門の「決済」を1クリック/タップでできるような環境が整えば、ソーシャルメディア→動画→寄付という流れができてくるかもしれません。

Facebookの提供する「Donate」ボタンの機能は、現在は米国をベースに活動している団体に限られているようですが、日本のNPOにも門戸が開かれないか?注目していきたいです。

トレンド3:オフラインとSMSの連動

3つ目が、オフラインでのキャンペーンを、SMS(電話番号に送るショートメッセージ)と連動させる手法です。

「Making Mobile Work for Fundraising」というセッションで、事例として紹介されていたのは、米国や英国でSave the ChildrenやWorld Visionなど大手NGOが行ったキャンペーンでした。

「マラリア蚊によって死に追いやられる子ども達を助けたい!」「ミャンマーの男の子が、支援を待っています」といったメッセージを掲載。
支援を検討している方には、大きく表示した番号にテキストメッセージを送ってもらうよう、誘導します。

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スマホから番号にメッセージを送ると、団体からは自動返信のメッセージが届きます。
名前や住所など登録できるフォームのURLが送られてきて、ドナー自らが寄付の登録をできるパターンのほか、団体からドナーに「電話で説明してよいか?」と許可を求めて「Yes」と返信した方には電話をかけるといった設計も。

私が過去に日本で、新規ドナー獲得のキャンペーンをオフラインで実施した時、オンラインと比べてROIは相当に低い数値になってしまったことがありました。
オフラインでは導線をしっかり工夫しないと、「認知度アップやPRには貢献しても、直接的なアクションにはつながりにくい」という印象を抱いていました。

電話での受付(例:フリーダイヤルの表示)は心理的なハードルが、オンラインへの誘導(例:QRコードや検索キーワード・URLの表示)は手間が、ユーザーによってはかかってしまいますね。
ですが、表示された番号にテキストメッセージを送るだけなら手軽にできますし、またコンバージョンまでの効果測定も行いやすいでしょう。

日本では、(米国や英国などで一般的な)テキストメッセージを通じて携帯電話の料金を通じて寄付の送金ができる仕組みが実現されていない※ですし、また企業でもSMSのマーケティング活用はあまり進んでいません。
ショートメッセージで「応募する」「寄付する」という行動が一般的ではないなかで、このようなキャンペーンを行ったとしても、今すぐ成功する可能性は高くはないでしょう。

ただし、ユーザー行動の変化や制度の変更などが今後起こっていけば、オフラインのチャネルを効率的に活用できるチャンスが生まれるかもしれません。

※現時点でも、ソフトバンクのユーザーは「かざして募金」を通じて携帯電話の支払い料金とともに寄付をできるようになっています。

後編では、トレンド4として「Peer to Peer」を、トレンド5として「2ステップでのマンスリーサポーター獲得」をお伝えする予定です。